桜月side

ーガチャッ


『おはよ。』


いつも4人の声がそろって挨拶する。


これはあたしたちの日課みたいなもの。


あたしたち4人組はいわゆる幼なじみ。


赤ちゃんの頃から一緒なんだ。


一緒にいることがいつの間にか当たり前になってた。

いないと体の一部が欠けちゃったみたいな感じになるの。


言葉にしなくても4人のことなら分かる。


それがあたしたち。


「お。今日はお団子?」


そう言ってあたしのお団子をポンポンするのは、南 凛翔。


サラサラの黒髪に高身長でモテるんだよね。


まぁ、モテるのはあたし以外みんななんだけど…。


「似合ってるじゃん、桜月」


そうニコニコ微笑みながら言ってくれたのは北田 響。


染めてない綺麗な茶色の髪の持ち主。


2人ともイケメンなんだよね。


「可愛すぎるよ、桜月!」


可愛い笑顔を向けてくるのは西宮 星叶。


茶色のボブヘアーで天使級の可愛さ。



「東雲会長ー!!」


4人でいつもと変わらない朝を過ごしていると後ろから大きな声で呼ばれた。


「ん?まつりちゃん!どーしたの?」


肩で息をするまつりちゃんは、同じ1年生で生徒会に所属する子。


「出待ちを廃止させてください!会長たちのファンが校門を塞いでるんですよ!」


そう、登下校の時は必ず全校生徒のほとんどが集まっている。


何度もまつりちゃんが注意してくれてるんだけど…。


「それは、あたしが注意するより3人が言ったほうが効果あるんじゃないの?」


あたしは、星叶たちを見る。


『なんで?』


4人の声がそろった。


「え?だって、3人のファンでしょ?」


あたしの言葉に全員がため息をつく。


え?なにがおかしいの…?


「これだから鈍感は…まぁ、ここは生徒会長の桜月が行くべきだね!」


なにか呟いた響があたしにそんなことを言ってくる。


「さんせーい♪」


星叶まで…。どうしよう。やっぱり生徒会長の仕事なのかな?

今までは目を瞑ってきたけど、そろそろほんとに増えすぎてるし他の人にも迷惑かけちゃうもんね…。


「分かった!」


あたしは、スタスタと早歩きで向かう。


みんなもそんなあたしについてくる。


だけど、あたしは幼なじみ4人とかまつりちゃん以外にはクールになっちゃうんだよね。


なんていうか、勝手にでちゃうの。



まだ校門までだいぶ距離があるのに、すでに何人ものファンの子たちが道の横で待っている。


これは近所の人たちにも迷惑かけてるよね。


あたしは小さくため息をついた。


「ちょっと、皆さん集まってくれますか?
お話があります。」


あたしの言葉にみんなはそわそわしだす。


やっぱり、3人のほうがいいんじゃない?


「今日も、綺麗だよな!」


「会長、完璧すぎる!」


「てか、幼なじみ4人組レベル高すぎ」


あちこちから色々聞こえてくる。


でも、なにを言ってるかは分かんない。


「これからは、登下校の際の出待ちは禁止します」


みんなは驚きの表情をみせる。


ちょっときつかったかな?


1人の女の子がパッと手をあげる。


「す、すみません!なら、学校内はいいですか?」


「登下校に東雲様を見られないなんて学校に来ている意味がありません!」


え。あたし?!でも、そんなこと言われても…。


困っていると、後ろからあたしの頭に顔を乗せて凛翔が答える。


「いーけど、迷惑になることとかしないで」


その言葉にみんなはホッと息をつく。


泣きだす子までいて…。


すごいなぁ、あたしの幼なじみたちはって思った。


「良かったです!私が言っても聞いてもらえないんですよ…」


まつりちゃんは、安心したみたい。


「会長のおかげだな!」

凛翔は、あたしの頭をポンポンする。

これは凛翔のクセみたい。


小さい頃から兄妹みたいな関係だったあたしたち。


だから、ポンポンされると安心するんだ。


優しく微笑む凛翔になぜかドキッとする。


なに…?これ…?

星叶にも、響にもこんなのないのに。


どうして、凛翔には…。



「うぅん。完全に凛翔だよ!」


凛翔も星叶も響もみんな困ってるのにすぐ気づいてくれるんだ。


みんなで助けあってるからこんなに仲が良いのかも。


「ありがと!凛翔」


笑顔でお礼を言うと、なぜか他のみんなが顔を赤くする。

え?いま、春だよ?


暑くはないはずなんだけどな。


「まじムカつく…」


凛翔は、みんなのほうをみて呟いた。


「ん?」


「なんでもねーよ、気にすんな。」


凛翔に誤魔化されてしまった。


凛翔がみんなを睨んでるように見えるんだよなぁ。


どうしたんだろう?


「凛翔も大変だね。」


響は凛翔を横目に見ながら笑ってる。


その横で星叶まで笑ってるし、ついていけてないのってあたしだけ?


「うるせーな、行くぞ桜月!」

あたしは首をかしげてから凛翔を追った。