彼女の幸せを想って、ワザと辛い選択をしたというの?
だったら、尚更。
三好さんの心に私が入り込めるような隙なんて、あるわけがない。


「付き合っている人? いるなんて、答えてないけど?」

「さっき『うん』って、彼女に答えてたじゃない」

「それは、麻衣が結婚してるのかって聞いてきたからで。付き合っている人がいるのか、って質問に『うん』と答えたわけじゃないよ?」


何それ!
だって、話の流れからして。
そういうことだって思うじゃないか。


「じゃ、じゃあ三好さんには、付き合っている人はいないの?」

「……ノーコメント」


口の端を軽く上げ気味にして答えた三好さんに、それ以上何も聞けない雰囲気を醸し出されてしまい。
黙って目の前のカフェモカを口にするしか出来なくなってしまった。


なに今の「ノーコメント」って。
はぐらかされたんですけど!


モヤモヤする気持ちが邪魔をして、せっかくのカフェモカが美味しく感じられない。
三好さんも自分のカップに珈琲を淹れて飲み始めてしまっているし、上手く聞き出す術がなくて。
恨めしそうに口につけたカップの端から視線を三好さんに向けていた。