三好さんの声に後れを取りながらも「いらっしゃいませ」と振り返りながら声をかける。
入り口に立っていたのは、さっき加納さんを私の前から連れ去て行った男だった。


「こちらにどう……」


言いかけた私の言葉を遮った男は「先程は失礼しました」と頭を下げた。
来店早々、突然謝られても意味が分からない。
しかし目の前で頭を下げている男は、間違いなく私に向かって謝っている。


「修君、いつもの席空いてるよ」

「それじゃあ」


三好さんに促され、迷わず空席に向かう彼は窓際の一番隅の席に腰を下ろした。
いつも彼女が、加納さんが座っている席と同じ場所に。


三好さん、今「シュウ君」って言ったよね?
この人のことも知ってるの?


「彩夏ちゃん、彼の所に持って行って」と用意されたドリンクは、加納さんが飲んでいたものと同じアイスティーだった。


「ふたつ? あと一つは誰に?」

「彩夏ちゃんの分、彼は彩夏ちゃんに話をしに来たんだと思うよ」

「聞いても、いいの?」


だって、詮索するなって言たのは三好さんでしょ。
必要以上に首を突っ込むなって。
それなのに、彼からは話を聞いてもいいって、どういうことなの?
三好さんの考えていることが分かんないよ。