「待って」
身軽になり、彼女の元へ「さぁ向かうぞ」と駆けだそうとした瞬間、三好さんに呼び止められ。
振り向いた私に、袋から缶ジュースを一つ取り出し「彼女に」と手渡してくれた。
「先に帰ってるよ」と言いながら両手いっぱいに荷物を抱えている三好さんに向かい、軽く手を上げて答える。
「二人分の荷物を持たせちゃって、ごめんね」と思いつつ、足は既に彼女の方に向かっていた。
沿道から海岸に繋がっている階段を見つけ、ゆっくりと下りる。
右手には食べかけの棒アイス、左手には缶ジュースを持っているのだ。
慎重に降りなければ、階段に残っている砂で足を滑らせたら大変なことになってしまう。
途中、アイスが融けだし。慌てて頬張る。
砂浜に下り立ち、足をとられながらも彼女が座っている所まで辿り着く頃には、右手に持っているのは棒アイスの棒のみになっていた。
「あの」
「ひゃっ」
驚かせるつもりなど無かったが、物思いにふけっていた彼女の背中に声をかけた瞬間、ビクッと身を縮まらせてしまった。
恐る恐る振り返った彼女は、私の顔を確認した途端。
ホッとしたように表情が緩んだ。
「あ、さっきの……」



