・喫茶店『こもれび』



浮かれている気持ちを悟られないように、視線を三好さんから逸らし海辺に向ける。
目の飛び込んで来たのは、青空が反射している海面の青色だった。

とても綺麗で、その青色に吸い寄せられ「寄り道したい」と口にしてしまいそうだったが、その青色に溶け込んでしまいそうな人物を見つけ、目が釘付けになる。


「なにしてるんだろう。ずっと居たのかな」


私が指差した先に目を向ける三好さんに「私達がスーパーに行く時から、あそこに居たのかな」と呟く。
三好さんと私の視線の先には、アイスティーのみの注文で長時間お店に居たお客様。
あの「はかなげな彼女」の後ろ姿があったのだ。


「俺達がスーパーに向かう時からなら、結構な時間ここに居たってことだね」と口にした三好さんの言葉が、彼女を気になって仕方がない私の背中を押した。
気付かないフリをして、この場を離れる気にはなれなくなってしまい、三好さんにお願いする。


「ちょっとだけ、あのお客様の所に行ってきてもいいかな?」

「何をしに?」

「分かんないけど、気になるの。お店に居た時から気になってて」


手にしていた荷物を「はい!」と、私よりもはるかに多く重い荷物を持っている三好さんに差し出す。
問答無用で荷物を渡された三好さんは、私の勢いに圧されたのか。
何も言わずに荷物を受け取ってくれた。