・喫茶店『こもれび』



「あー、食べる! 食べます!」


袋を開け、棒アイスを手に「あーん」と口を開けている三好さんと、アイスの間に割り込み「バクッ」と噛り付き、三好さんの手からアイスを奪う。


「最初から素直に食べればいいのに」

「だってー」


これじゃあ「恋人」という感じじゃなくて、まるで「兄妹」みたいじゃん。
私が望んでいるのは、前者であってですね。
三好さんと兄妹みたいな仲になりたいわけじゃないんだってば!


頬を膨らませながら、プイッとそっぽを向く。
そんな一瞬の隙をついた三好さんが顔を近づけ、手にしていた棒アイスにかじりつくと一口奪っていった。


「あ! 一番おいしい所、食べたー」

「うん、おいしい」

「三好さんも食べるなら、二個買えばよかったのに」

「彩夏ちゃんが美味しそうに食べてるから、一口欲しくなっただけ。中のソースはラズベリーかな」

「そうなの? 真ん中のソース、私まだ食べてないよー」


マズイ。
今、すっごく動揺してる。
一個のアイスを分け合って食べていることとか、それ以前に「これって間接キスしたことになるのかな」とか。
こういうことするの、三好さんにとっては何でもないことなのかな。
ドキドキしている私が変なのかな。

なんて、色んなことが頭の中を駆け巡ってるけど。
やっぱり単純に嬉しいや。