って、それだけ?
なにかを期待してた私、完全にアホみたいだ。
「なに? なんかあるの?」と尋ね返すと、三好さんは壁に掛かった時計を見つめ、少し考え込んだ後に口を開いた。
「彩夏ちゃんに店を任せて、買い出しに行って来てもいいかな?」
「買い出し? 材料かなにかが足りなくなった? なら、私が行ってくるよ」
店番位なら出来るけど、お客様が来店した時に三好さんが居なかったら、誰が珈琲を淹れるのか。
私では出来ないのだから、どう考えても三好さんがお店に残り、買い出しは私の役目ではないか、と力説してみる。
そんな力説が効いたのか、逆に店を任せるのが不安になったのか。
三好さんから思いがけない誘いを受けた。
「彩夏ちゃんも一緒に行く?」
「行く!」
即答したことは、言うまでもない。
勝手に「デートに誘われた!」と脳内変換してしまった位なのだから。
そんな思考をしていたことを気付いたかのように、三好さんは私を見て笑っている。
「そんなに買い出しが嬉しいの?」と突っ込まれ「いやいやいや、そうじゃないんだけど」なんて、苦しい返事をしてみたりして。
完全にからかわれてしまっているのに。
私の反応を見て、いちいち楽しそうに笑ってくれる三好さんを見ることが出来るのなら。
まぁ、良しとしますかね。



