「なんで…よっ」
「な、なんとなく?」
「なんとなくって何!ひどいよ!!」
翔くんにとっては何となくでも、私にとってはファーストキスだし、嫌って言ったのに離してくれなかったし
私の気持ちは全部無視だ
私はまだ、翔くんのほんとの姿を見ても、友達でいようって思ってた
資料のときも、料理のときも、手伝ってくれる優しさは本物だったし
『うまい!』
そう言った翔くんの笑顔は嘘がなかったから
なのに… それなのに…
「翔くんのバカっ!もういい!今日はそのソファで寝て!私もすぐ寝るから!」
私はお風呂場に一目散に飛び込んだ
湯船に浸かってさっきの事を考える
何となくでも、キスとかって…出来るのかな?
でも翔くんはモテるみたいだし、慣れてるのかも
そっか、女の子と2人っていうチャンスを使ってキスしてみただけなんだ
きっと今まで、翔くんにキスされた女の子はみんなすぐにメロメロになって、
翔くんはそれを分かってるから私にもしてみたんだ
翔くんが今までどんな風に女の子と接してきたかなんて知らないしもしかしたら全然違うのかもしれないけど…
今の私はそう思ってしまう
はぁ… いったいどんな顔して会えばいいのよ…
「ばか…」
私は湯船の中にブクブク沈んでいった
