貴方と付き合い始めたのは、貴方の言葉がキッカケだった。







「オレと付き合ってください」


そんなストレートな告白を、直接受けたのは生まれて初めてだった。


私の目の前で頭を下げているのは、私も良く知る隣のクラスの男子。

池内大翔。
背が高くて、サッカー部の中でもかなり上手いらしい。顔も悪くない。
そこそこモテている人。


そんな彼がどうして私に。

告白を受けて一番に思ったのはそれだった。


「冗談、とかじゃないよね」

「そんなわけ、本気」

「でも……」


言いかけ聞いてもいいのか迷い、口を瞑った。
言いかけた内容が気になるのか不思議そうな顔をする池内。

聞かなければ話は進まないと判断して、口を開いた。


「……七海ちゃんと付き合ってたんじゃないの」

「別れた。三浦、知らなかった?」

「知ってたけど、」


別れたって話というか噂は、友達から聞いていた。
それも噂だったし半信半疑であんまり信じてはなかったけど。

別れたのが本当だとして、それはついこの間のことで。


「からかってるだけでしょ?」

「そんなわけねえって」

「だって、別れたっていっても最近じゃん」

「そうだけど」

「……信じられないし、ごめん」


その言葉を発した後、流れた沈黙。

友達に言えば「もったいない」とか言われるんだろうけど。
軽い人と付き合って捨てられるなんてごめんだ。

それなら最初から付き合わない方がいい。


あんまり静かだから不自然に思い、落としていた視線を池内に向けた。

瞳は真っ直ぐに私を見つめていて。
合わさった目に心臓が音を立てる。


「オレ、諦めねえから」

「え?」

「絶対お前振り向かせるから」


真剣な顔でそう言って、池内は去って行った。

唖然としてその場から動けない私。


胸が高鳴ったような気がした。