髪色と同じくらい深い黒に吸い込まれないよう私はそれから目を逸らす。
(えっ…!?いつから起きて…)
「……すず…ね…?」
はい?誰ですかそれ??
他人と間違えられて気分が良いわけない。
「あのっ!そろそろ手はなし……」
”離して下さい!”
そう言おうと再び青年に視線を戻した。
フッ
そこには今まで見てきたどんな綺麗なものより、美しく、優しく、儚く微笑む彼がいた。
何故か泣きそうになった。理由はよくわからない。
色々な感情に耐えかねた私は気付くと逃げ出してしまっていた。
あんな綺麗な人にあんな顔させちゃう人って
いったいどんな人なんだろう…
