「さっきは、ありがとうございました」

ずっとデザイナーになれなかった気持ちを引きずりながら、考えないようにしていたけれど、真正面から向き合ってみたら、なんだかスッキリした。
彼は気づいていたのだろうか。本当はデザインがやりたくて仕方がなかった、未練たらたらの私に。

そんな私を穏やかに見下ろしながら、御堂さんは甘えるように首を傾げた。

「さっき、俺の前で初めて心の底から笑ってくれたよね」

「……初めて、でしたか?」

「うん。いつも怒るか、呆れるか、驚くかで……それはそれで表情豊かでいいけれど――」

御堂さんは満面の笑みで私を眺める。

「やっぱり笑っている顔が一番素敵だ」

ドキリと鼓動が飛び跳ねた。
私の笑顔なんかより御堂さんのその笑顔の方がよっぽど魅力的だよ……

確かに彼と一緒に笑い合ったような記憶がない。
私はきっと、無愛想で意地の悪い女の子に映っていただろう。

「……ごめんなさい。今まで笑顔のひとつも作らなくて」

「どうやったら笑ってくれるか、試行錯誤していたんだけれど、まさかこんなところで笑顔になってくれるなんて」

はは、と空に向かってちょっと情けなく笑う御堂さん。
申し訳なく思っていると、不意に彼の左手が伸びてきて、さっきみたいに私の頭を優しく撫でた。