Melty Smile~あなたなんか好きにならない~

降り注がれたその言葉は、今までもらったどんな褒め言葉よりもうれしいものだった。
胸の奥がじわりと温かくなって、頬が熱を帯びる。
「はい」と頷きながらも喜びが抑えきれず、ふにゃりとした笑顔になってしまった。

私が笑ったのを皮切りに、御堂さんや黒木さんの表情にまで安堵の笑みが宿る。

こんなにも心が弾むのは、プロのデザイナーに褒められたからだけではない、その相手が御堂さんだったからかも知れない。
プロ意識の高い彼に褒めてもらえたからこそ、心の底から誇らしく思える。
いつの間にか彼のことを信頼しきっている自分がいて、それが悔しくもあり、うれしくもあった。


たまにふいっと姿を消してしまう御堂さん。
帰る前にひと声かけようと事務所の建屋内を探し回ったけれど見つけることができず、黒木さんに聞いてみると「屋上でよく考え事をしてますよ」とのこと。
言われた通り屋上に来てみたら、案の定、彼は端のフェンスに寄りかかり、ぼんやりと空を見つめ黄昏れていた。

夜。辺りは暗いけれど、周囲の建物から放たれる明かりと少し離れたところにある駅前の電飾で、お互いの表情がハッキリとわかるくらいには明るかった。

「こんなところで休憩していたんですね」

「少し頭をクリアにしたくて」

四月も後半になると、風がふんわりと暖かくて気持ちがいい。御堂さんのロングカーディガンと長めの黒髪が風になびいていた。
彼の顔つきも、オフィスにいたときよりも晴れやかになっている気がした。