Melty Smile~あなたなんか好きにならない~

「だいたいは黒木くんの言う通りだ。特に問題なのはこのペールピンクを選んだことかな。たしかライバル社が同じカラーの商品を出していたはずだから、外した方がいい。せっかくだから、この会社の社色でもあるサーモンピンクに変えて、グリーンもトーンを合わせれば、それなりに強い印象になる。……この装飾の形の意味は?」

「えと……女性らしさを出したかったので曲線にしました」

「理由が少し薄いな。円形にしてタブレットを模したらどう?」

「……なるほど」

私はふたりの指摘を急いでメモ書きした。確かに彼らの言う通りで、自分の考えの浅さをまざまざと思い知らされた。
ひょっとしたら、これこそ私がデザイナーになれなかった原因なのかも知れない。
大手企業の就職試験にことごとく落ちてしまったのは、単純に運ではなくて、それなり理由があったんだ……

ぎゅっと瞳を閉じて自らの不甲斐なさを噛みしめていると、不意に頭の上に温かいものが触れた。
驚いて目を開けると、御堂さんの左手が乗っかっていた。

「オリジナリティはあるね。少し対象年齢の設定が低めだが、クライアントに提案してみる価値はあると思う。プロとしては五十点。でも、もしこれが入社試験なら合格だ。経験を積めば、もっと伸びると思う」

不意打ちの褒め言葉に、ポカンと彼を見つめ返してしまった。
目をぱちくりさせている私の頭をくしゃっと撫でる。

「華穂ちゃんには、デザイナーの素質があると思うよ」