『とにかく、しばらく不用意に夜道を歩いたり、危険なことはしないでほしい。本当に、すまない……』

そう言って彼が電話を切ろうとしたから、慌てて引き止めた。

「待ってください! それって、まだ御堂さんは狙われているってことですよね!? 大丈夫なんですか?」

『俺? うん。俺はまあ。心配いらないよ』

「またそうやって適当なこと――」

『大丈夫大丈夫。これでも男の子だからね』

「刃物を持った相手に男の子もなにも通用しな――」

『慣れてるから平気だよ。それじゃあ』

言いたいことだけ言い放って、電話は切れた。

なんだか、けむに巻かれた気分。大事なことをまたごまかされた気がする。
いつもそうだ、自分のこととなると『大丈夫』の一点張り。
肝心なことは、なにも話してくれない。

それって、私が信用ならないから……?
私相手にいちいち説明する必要はない、そんな風に思われている気がして一気に虚しさが押し寄せてきた。

結局、彼の声を聞いたって『ああ、元気そうでよかった』なんて気分にはまったくなれなくて、心配と罪悪感がいっそう膨らんだだけだった。