彼曰く、父親の仕事の関係上、逆恨みされることが多く、幼い頃から危険とは常に隣り合わせの生活を送っていたらしい。
融資を断った子会社の社長に命を狙われるとか、業務提携を解消した会社の責任者から、誘拐されそうになるとか。

そういう恨みの矛先は、決断した社長本人だけでなく、家族にも向かう。
特に力を持たない子どもへと――ひとり息子だった幼少期の御堂さんは、犯人からしたら恰好のターゲットだった。

『最近はめっきりそういうこともなかったから、警戒を怠っていたよ。まさか一緒にいた君まで巻き込んでしまうとは……完全に俺のミスだ。すまない……俺の考えが甘かった』

受話口から、本当に申し訳なさそうな声が響いてくる。自分を責めていた。

『だから華穂ちゃんが気に病む必要はないんだ』

「でも、庇ってくれたのは――」

『頼む。これ以上謝らないでくれ。悪いのは、なんの考えもなしに行動していた俺だ。自分が嫌いになりそうだよ』

もうこれ以上聞きたくないとでもいうように私の謝罪を阻んだ。現実や私から目を逸らしたがっているようだった……。

『パーティー会場で、華穂ちゃんの素性までは明かさなかったから、これ以上狙われることはないと思う。けれど、もし誰かに付きまとわれたり、不審な人物を見たら必ず教えてくれ。……本当は俺が守ってやれればいいんだけれど、下手に関わると、余計危険な目に遭わせてしまいそうだから、もうこれ以上そばにいない方がいい――』

それはまるで、遠回しに『もう関わらないでくれ』と言われたようだった。
告白してもないのに振られたみたいに悲しくなる。君とは同じ世界に住めない、そう宣言されたようで。