「御堂さん!」

悲鳴のように彼の名を叫んだ。
視界が真っ暗になり、胸の中に絶望が広がる。

「……大丈夫だ。少し切れただけだから」

苦し紛れに私へ笑いかける御堂さん。全然大丈夫そうには見えない。
こうしている間にも、アスファルトに鮮血のまだら模様が広がっていく。

もう一方の手で傷口を押さえているけれど、あまり効果はないようで、指の隙間から血液がポタポタとこぼれ落ちていく。
こんなにも血が止まらないということは、傷が深いのか、切った場所が悪いのか。
いずれにせよ、放っておけるような状況ではない。

それなのに、彼はもう一度、私へ言い聞かせるように微笑んだ。

「大丈夫、心配ないよ」

血の気の引いた顔でなに言ってるんだ。
やっぱり彼は嘘つきだ。そうやって、強がってばかり。

とにかく、震えている場合じゃない。私がなんとかしなくては。今この場で手当てできる人間は、私しかいないのだから。
こんなにもたくさん出血し続けていたら、危険な状態になりかねない。

「……これで押さえていてください」

私はジャケットに入っていたポケットチーフで傷口を覆うよう御堂さんに頼んだ。その上からショールをきつく巻いて止血を試みる。
けれど、震えが止まらず、上手くショールが結べない。

焦りと苛立ちが私をじわりじわりと追いつめて、涙が零れそうになる。
気が動転して狂いそうだ。