「……思っていません」
私が答え終えるのを、御堂さんが不安そうな顔でじっと待っている。
「初対面のよく知らない人と――好きでもない人と、キスなんてできません」
これが私の素直な答えだった。
例え相手がどんなに恰好よくても、お金持ちでも、すごい名声を持った人だとしても。
よく知らない相手と恋をすることなんてできないし、好きでもない人とキスしたいだなんて思わない。
今、私が好きな人は――
見上げた先の彼にきゅっと胸が疼いた。
私の言葉は納得のいくものだったのだろうか、御堂さんが大きなため息をこぼした。
さっきまでの険しい顔つきがゆっくりとほぐれていく。
すると、今度は私の身体を引き寄せてぎゅっと抱きしめた。
優しく、丁寧に、そっと包み込むように。大切なものを、慈しむように。
「えっと、あの……?」
私の肩に顔を埋めて、沈黙する。
「……御堂さん?」
なんの答えも返ってこない。
なにも言わぬまま、ぬくもりをたしかめるように、ただひたすらに抱きしめる。
私の身体が、力を失くしていくのを感じた。
嘘をつかれた悲しさとか、真実を知ってしまったときのショックとか、張り詰めていたもの、全部が薄れていく。
もう二度と彼を信じないと心に決めたはずなのに、その誓いがあっさりと揺らぐ。
失ったはずの彼への気持ちが、愛おしさが、こんなにも簡単に舞い戻ってきてしまうなんて。
応えても……いいのだろうか……?
また嘘だなんて言われたら、今度こそ彼のことを嫌いになってしまう。
私が答え終えるのを、御堂さんが不安そうな顔でじっと待っている。
「初対面のよく知らない人と――好きでもない人と、キスなんてできません」
これが私の素直な答えだった。
例え相手がどんなに恰好よくても、お金持ちでも、すごい名声を持った人だとしても。
よく知らない相手と恋をすることなんてできないし、好きでもない人とキスしたいだなんて思わない。
今、私が好きな人は――
見上げた先の彼にきゅっと胸が疼いた。
私の言葉は納得のいくものだったのだろうか、御堂さんが大きなため息をこぼした。
さっきまでの険しい顔つきがゆっくりとほぐれていく。
すると、今度は私の身体を引き寄せてぎゅっと抱きしめた。
優しく、丁寧に、そっと包み込むように。大切なものを、慈しむように。
「えっと、あの……?」
私の肩に顔を埋めて、沈黙する。
「……御堂さん?」
なんの答えも返ってこない。
なにも言わぬまま、ぬくもりをたしかめるように、ただひたすらに抱きしめる。
私の身体が、力を失くしていくのを感じた。
嘘をつかれた悲しさとか、真実を知ってしまったときのショックとか、張り詰めていたもの、全部が薄れていく。
もう二度と彼を信じないと心に決めたはずなのに、その誓いがあっさりと揺らぐ。
失ったはずの彼への気持ちが、愛おしさが、こんなにも簡単に舞い戻ってきてしまうなんて。
応えても……いいのだろうか……?
また嘘だなんて言われたら、今度こそ彼のことを嫌いになってしまう。



