「――自分のパートナーは自分で選ぶよ。誰にも干渉させる気はない」

それだけ言って、陣さんを残し、庭園の外に向かって歩きだす。
その不愉快そうな眼差しに、離してとも言えなくなって、おとなしく彼のあとを着いていった。

歩調が少し早い。いつも私の隣にいるときは、もっとのんびり歩いてくれるはずなのに。

普段笑ってばかりいるせいか、おどけていない御堂さんをこんなにも怖く感じてしまう。
今、彼はなにを考えているのだろう。

庭園を抜けたところで、私へ回していた腕を解いて、足を止めた。
ホテルの正面玄関へと続くひと気のない歩道の上で、改まって向き直る。

「ひとつ、聞いてもいいかな」

御堂さんの難しい表情に、思わず肩がびくりと震えてしまった。
いったいなにを聞かれるんだろう。なんにしろ、こんな彼を目の前にして、まともに受け答えできる自信はない。

けれど、彼の表情は口を開いた途端、物憂げに沈んだ。

「もし俺があのとき駆けつけてなかったら、華穂ちゃんは陣を受け入れてた?」

え……?

違う意味で、ドキリと震えた。

「陣とキスしてもいいって、思ってた?」

いつも表情を崩さない御堂さんの、悲しげな顔。余裕なんてどこにも感じられなかった。
助けを求めるかのように、私の手をぎゅっと握ってきて……。

完全に、まいってしまった。

手のひらと心の感覚が直結しているんじゃないかと思うくらい、胸の奥がぎゅっと締め付けられ、痛む。
彼に翻弄される自分はバカだと、ついさっき反省したばかりなのに、性懲りもなく私の心はぐらぐらと揺れ惑っていた。