「仕方ねぇから、肩貸してやる。泣いていいぞ」

「……いらないです。泣きませんから」

「かわいげのないヤツ。なさ過ぎて、逆にかわいいぞ」

「なんですか、それ……」

バカにされた気がしてムッとむくれていると、陣さんが急に私の顔を真正面から覗き込んできた。
男らしいくっきりとした顔立ちが目の前にやってくる。

「あんた、夕緋の悪口言わないのな。悪いのは全部、アイツなのに」

今まで私にそこまで興味がなかったのか、目の端でちらりと流すだけだったのに、真っ直ぐに見つめられたのは初めてで、思わず固まってしまった。

「もっとぶちまけたら、楽になるんじゃないのか?」

「……陰で文句を言っても仕方ないですし」

確かに御堂さんの態度は思わせぶりで最低なものだったけれど、どちらかと言えば私が勝手に振り回されて、傷ついただけで……。
平手うちまでしてしまったし、これ以上彼に責任を望むのは、フェアじゃない気がした。

「十分です。すっきりしました」

「本当は未練たらたらで泣いてるくせに」

「……そんなんじゃ――」

「あんた、いい女だな」

突然、陣さんが私の背中に手を回し、強く抱きしめてきた。

「じ、陣さん!?」

その細身からは想像できない男の力で抱きすくめられ、為す術もなく腕の中に収められてしまった。
彼の身体の感触が全身に伝わって、恥ずかしさに真っ赤になってしまう。
慰めてくれる気持ちは嬉しいけれど、こんな状況じゃ悲しみにも浸っていられない。