「夕緋! お久しぶりです! 会いたかった!」
「千里!」

御堂さんは胸に飛び込んできた女の子の身体をしっかりと受けとめ、熱い抱擁を交わした。
人前であろうと臆することなく、ぎゅっと強く抱きしめ合うふたり。

まるで久方ぶりに再会する兄妹のように――
――いや、離れ離れになっていた、恋人同士のように……?

「千里……」
陣さんが表情を強張らせてその名を呟いた。

この人が、御堂さんの婚約者……?

困惑する私と陣さんをよそに、御堂さんと千里さんのふたりは、再会の喜びを確かめ合うように視線を絡ませた。

「一年ぶりでしょうか! 会えるのを楽しみにしていました!」

「スイス留学は楽しかった?」

「はい! つい先週日本に帰ってきたばかりです! 本当はすぐ夕緋に会いに行きたかったんですが、父様と母様が久しぶりだからと離してくれなくて――と、そうだ! 」

興奮冷めやらぬまま、千里さんは御堂さんの両手をぎゅっと握りしめ、捲し立てた。

「父様と母様から婚約の話を聞きました! 私、嬉しいです! 夕緋のお嫁さんになれるなんて――」

「千里」

キラキラと瞳を輝かせる千里さんを、御堂さんは優しい笑顔のまま遮った。

「その話の前に、紹介したい人がいるんだ」

不意に御堂さんが私の肩を引き寄せ、自分の胸の中に収めた。

……え?