「お前、この女にどんな説明してんだよ」

「彼女にはなにも話していないよ。話す必要があるか?」

「は!? あるに決まってんだろ、こんな大切なこと――」

どうやら御堂さんは、なにか重大なことを私に隠しているらしい。

いまいち要領を得ないふたりの口論を見るに見かねて、私は彼らに問いかけた。

「『千里さん』って、どなたなんです?」

一瞬黙り込むふたり。
ニッコリと笑ってごまかした御堂さんは、答える気がなさそう。
仕方なく視線の向き先を陣さんに変えると、彼は苦虫を噛み潰したような顔で、御堂さんを指さし答えた。

「千里は、こいつの婚約者だ」

え……?
婚約者……?


そのとき。

「夕緋!?」

背後から響いてきた可愛らしい声に、私たち三人は振り返った。

薄紫色のドレスを身に纏った、ふんわりとした雰囲気の女の子が駆け寄ってくる。

おそらくまだ十代だろう、幼さの残る表情に、クルクルと巻かれた栗色の髪。
けれど胸は豊満で、ドレスの上からでもウエストがキュッとくびれているのがよく分かった。

羨ましくなるくらい典型的な『男の子から愛される女の子』だ。
彼女は、御堂さんを見るなり飛び付いてきた。