「……はい」

「おめでとう。それから、ごめんね。せっかくの誕生日なのにこんな時間まで付き合わせて」

「いえ……」

「なにかお詫びしないとな」

そう言って御堂さんは顎に手を添えて考え込む。

「後日、改めて食事でもご馳走させてもらえる?」

「いえ、そんな、けっこうです」

「……それは遠慮? それとも、本心?」

瞳を悲し気にさせるものだから、思わずうっと押し黙ってしまった。

確かに、ここに来る前の自分なら、嫌だとはっきり断っていただろう。
けれど、今の私は――

「……御堂さんとの食事が嫌だって意味ではありませんよ」

不思議と、もう少し一緒にいてもいいかなぁなんて思っている。
おどけた顔をしながら、実は真面目な努力家で、ときに私を翻弄する魅惑的な彼のことを、もっと知りたい――いつの間にかそんな風に考えていた。

「YES、と捉えていいかな?」

「……はい」

私がしっかりとうなずいたのを確認して、彼は安心したように笑った。

「何が食べたい? なんでも好きなもの食べさせてあげる」

「なんでも……ですか?」

「うん。三ツ星シェフのレストランでも、A5ランクの高級松阪牛でも、なんでもいいよ」

「ほ、本当ですか? そんなお店、予約でいっぱいなんじゃ……」

「社長の権力でどうとでもしてあげる。その代わり、今日のことは他言無用だよ」