Melty Smile~あなたなんか好きにならない~

張り詰めた冷気がふたりの間に流れている。
やがて伯母様は嘆息し、あきらめたように肩を落とした。

「ひとりだけ、我が社の業務システムからそのお嬢さんの個人情報を抜き取った者を知っています」

私と御堂さんはギョッとして伯母様に視線を向ける。

「誰ですか!?」

「千里ですよ」

「千っ……」

その名を聞いて、御堂さんは言葉を失った。
まさかあの純粋無垢な瞳をした女の子がこんな過激な真似をしでかすとは、とても考えられなかったのだろう。
伯母様が私へ視線を移す。

「一度、千里があなたの会社で待ち伏せをしたことがありましたね。あのときでしょう」

「なっ!?」

御堂さんにとっては初耳で、驚いた彼は私の両肩を掴んだ。

「千里となにかあったのか? どうして教えてくれなかったんだ」 

「いえ……少しお話をしただけですよ。報告するようなことでは」

別れてくださいとお願いされたとは言えるはずもなく、私は答えをぼんやりと濁した。
納得できない顔の御堂さんだったけれど、すぐに詰問の矛先を伯母様へと変える。

「千里が犯人だと?」

「まさか。あの箱入り娘に犯罪などできるはずがありません。ですが……」

伯母様がふと視線を落とした。無表情の中にわずかに憂慮を滲ませながら、ぼそりと呟く。

「そそのかされたというのなら、話は別です」

私と御堂さんの表情が凍りつく。
……そそのかされた?