「聡明なお嬢さんだ」
お父様が私に慈悲深い眼差しをくれる。震える言葉の裏側を全部理解した、そんな顔をしていた。
「自らの引き際をちゃんとわかっている。それから、駄々をこねる子どものあやし方も」
「親父!」
駄々をこねる子ども扱いされた御堂さんが、苛立ちのままに叫んだ。
けれど、顔は上げない。わずかに肩が震えているのがわかった。
「夕緋。いつまでもわがままを言っているんじゃない。社長としての責任を放り出せないと言うのなら、せめて千里ちゃんと婚約して、いずれこの会社を継ぐ意思があるということを示しなさい」
「勝手なことを言うな! 俺は――」
「御堂さん」
私はソファから立ち上がった。
彼の目は見れなかったけれど、口だけは達者に動いた。
「もうやめましょう? 私ももう、危険なのはまっぴらなんです」
もしかしたら、私と御堂さんって、結構似ているのかもしれない。
強がりなところも、素直じゃないところも、それから、嘘がつけるところも。
「華穂!」
「失礼します」
お父様と伯母さまに頭を下げて、私は社長室の出口へと向かった。
すかさず脇に控えていた秘書が扉を開け、帰り道を作ってくれた。
お父様が私に慈悲深い眼差しをくれる。震える言葉の裏側を全部理解した、そんな顔をしていた。
「自らの引き際をちゃんとわかっている。それから、駄々をこねる子どものあやし方も」
「親父!」
駄々をこねる子ども扱いされた御堂さんが、苛立ちのままに叫んだ。
けれど、顔は上げない。わずかに肩が震えているのがわかった。
「夕緋。いつまでもわがままを言っているんじゃない。社長としての責任を放り出せないと言うのなら、せめて千里ちゃんと婚約して、いずれこの会社を継ぐ意思があるということを示しなさい」
「勝手なことを言うな! 俺は――」
「御堂さん」
私はソファから立ち上がった。
彼の目は見れなかったけれど、口だけは達者に動いた。
「もうやめましょう? 私ももう、危険なのはまっぴらなんです」
もしかしたら、私と御堂さんって、結構似ているのかもしれない。
強がりなところも、素直じゃないところも、それから、嘘がつけるところも。
「華穂!」
「失礼します」
お父様と伯母さまに頭を下げて、私は社長室の出口へと向かった。
すかさず脇に控えていた秘書が扉を開け、帰り道を作ってくれた。



