だって言っていたじゃない。
仕事も結婚も全部自分で決めるって。
俺の自由は、誰にも渡さないって。
――私の知っている御堂夕緋という人は、社長のくせにいつも飄々としていて、女の子を見るとすぐに口説き始めてしまう困った癖の持ち主で。
そのくせ、仕事に対しては大真面目、並々ならぬこだわりに徹夜だって厭わない。
格好つけたがりだから、弱いところはけっして他人には見せず、いつも強がってばかりいる――
こんな彼が大好きだから、彼を形作るなにかひとつでも失ってもらいたくない。このままでいてほしい。
私が壊したくなんかない。
かつて千里さんが私に言った言葉が頭をよぎった。
――あなたから身を引いてほしいのです――
――夕緋のことを本当に愛しているというのなら――
はじめから、そうしておけばよかったんだ。
結局、私と御堂さんは、結ばれる運命にはない――
私は御堂さんに向かって、にっこりと微笑んだ。
「私には、御堂さんの恋人は荷が重すぎます。住む世界が違うし、価値観も違う。お金とか権力とか思ったより大変そうだし、正直もう面倒くさくなっちゃって。恋人を作るなら、もっと普通の人がいいかなって」
最後の方は声が震えて、うまく笑顔を作れていた自信がない。
案の定、彼は瞳の上に手を当てながら、口もとを歪ませた。
「だから――」
膝に額を埋めて、深くうなだれる。
「愛想笑いは似合わないって、いつも言ってるじゃないか……」
仕事も結婚も全部自分で決めるって。
俺の自由は、誰にも渡さないって。
――私の知っている御堂夕緋という人は、社長のくせにいつも飄々としていて、女の子を見るとすぐに口説き始めてしまう困った癖の持ち主で。
そのくせ、仕事に対しては大真面目、並々ならぬこだわりに徹夜だって厭わない。
格好つけたがりだから、弱いところはけっして他人には見せず、いつも強がってばかりいる――
こんな彼が大好きだから、彼を形作るなにかひとつでも失ってもらいたくない。このままでいてほしい。
私が壊したくなんかない。
かつて千里さんが私に言った言葉が頭をよぎった。
――あなたから身を引いてほしいのです――
――夕緋のことを本当に愛しているというのなら――
はじめから、そうしておけばよかったんだ。
結局、私と御堂さんは、結ばれる運命にはない――
私は御堂さんに向かって、にっこりと微笑んだ。
「私には、御堂さんの恋人は荷が重すぎます。住む世界が違うし、価値観も違う。お金とか権力とか思ったより大変そうだし、正直もう面倒くさくなっちゃって。恋人を作るなら、もっと普通の人がいいかなって」
最後の方は声が震えて、うまく笑顔を作れていた自信がない。
案の定、彼は瞳の上に手を当てながら、口もとを歪ませた。
「だから――」
膝に額を埋めて、深くうなだれる。
「愛想笑いは似合わないって、いつも言ってるじゃないか……」



