伯母様の片眉が、ぴくりと跳ね上がった。話を聴くだけの価値を見い出したようだ。
そしてそれはお父様も同じだった。
いったいどんな話が飛び出すのか、わくわくしているのかもしれない。楽し気に瞳を大きくする。
「対価……? 千里との婚約のお話を飲んでいただけるのですか?」
「残念ながら、そのお話を飲むわけにはいきません」
ムッと伯母様の顔色が悪くなる。
「……ですが、伯母様方にとって重要なことは、千里の結婚ではない――橘家が束ねる企業の存続と繁栄、違いますか」
御堂さんは冷ややかに伯母様を睨み上げた。
ふたりの間で火花が散っているのが見えるようだけれど、けっして彼らは感情を表には出さず、冷静な振りをしていた。
各々の思惑が交錯する。
「ご協力願う代わりに、以前から宙に浮いていた大規模共同開発の話を現実のものにしたいと考えています。なんならこの場で契約書を作って明確に取り決めてもいい。……親父、かまわないんだよね?」
そのとき、お父様が場違いな笑みを浮かべた。なにかよからぬことを画策した、そんな表情だった。
「……それなら、私からもひとつ提案があるんだが、いいかな?」
御堂さんの肩が、ぴくりと動くのが見えた。
予想外の提案に隠しきれなかった焦りが表出したのだろう。
いったいなにを言い出すのだろうか、得体のしれない恐ろしさ。
もしかしたら「話しが違う!」と叫びたかったのかもしれない。
お父様は『いいかな?』なんて低姿勢ぶりをアピールしているけれど、きっと今この場で彼の意見は絶対だ。
御堂さんの駆け引きの是非が、この一存にかかっているのだから。
そしてそれはお父様も同じだった。
いったいどんな話が飛び出すのか、わくわくしているのかもしれない。楽し気に瞳を大きくする。
「対価……? 千里との婚約のお話を飲んでいただけるのですか?」
「残念ながら、そのお話を飲むわけにはいきません」
ムッと伯母様の顔色が悪くなる。
「……ですが、伯母様方にとって重要なことは、千里の結婚ではない――橘家が束ねる企業の存続と繁栄、違いますか」
御堂さんは冷ややかに伯母様を睨み上げた。
ふたりの間で火花が散っているのが見えるようだけれど、けっして彼らは感情を表には出さず、冷静な振りをしていた。
各々の思惑が交錯する。
「ご協力願う代わりに、以前から宙に浮いていた大規模共同開発の話を現実のものにしたいと考えています。なんならこの場で契約書を作って明確に取り決めてもいい。……親父、かまわないんだよね?」
そのとき、お父様が場違いな笑みを浮かべた。なにかよからぬことを画策した、そんな表情だった。
「……それなら、私からもひとつ提案があるんだが、いいかな?」
御堂さんの肩が、ぴくりと動くのが見えた。
予想外の提案に隠しきれなかった焦りが表出したのだろう。
いったいなにを言い出すのだろうか、得体のしれない恐ろしさ。
もしかしたら「話しが違う!」と叫びたかったのかもしれない。
お父様は『いいかな?』なんて低姿勢ぶりをアピールしているけれど、きっと今この場で彼の意見は絶対だ。
御堂さんの駆け引きの是非が、この一存にかかっているのだから。



