久々に会う新島は、顔色がすぐれなかった。
「どうやら医師によると、心の臓が弱っておるらしい」
もう長くはないかも分からぬ、と新島は力のない笑いをした。
「岸島さん、あなたには世界を見てほしい」
新島は言った。
「戦に負けた人間が出来ることは、他国で見聞を広げることです」
勝てば栄華は得られるが、その場に居続けなければならない。
「ひきかえ、負ければ居られる場は失うが、他国で見聞を広げて、それを活かすことが出来る」
あなたはそれが出来る、と新島は言った。
「あなたは新撰組でさまざまなものを見た。だから、他の人とは違う見方が出来るはずです」
さぁ、行きなさい──これが結局、岸島に対する新島の遺言となった。