そこに気づいたとき、

「…そうだ、この国を出よう」

岸島に去来したのは、国禁を犯してでも、自らの志に従った新島の顔である。

岸島は、新島に電報を打った。

返答が来た。

「京へ参られたし」

こうなると、岸島も動きは早い。

当時新しくなった横浜のステーション──現在の桜木町の駅にあたる──から京を目指した。