しばらく、過ぎた。

大垣屋を新島と八重が訪ねてきたのだが、

「実は岸島さんに、頼みたいことがありまして」

と言うのである。

「近くわれわれは祝言を挙げるはこびとなりまして、その立会人となっていただきたいと思いまして」

これには岸島は驚いたらしく、

「いや、槙村どのにお願い申し上げたほうがよいのでは」

と固辞した。

しかし。

「おれは会津の女の祝言など立ち会わんぞ」

と槙村には断られてしまい、

「ならば岸島さんにお願いをしてみてはどうか、となりまして」

と新島は言った。