こうして形見を届けるというミッションは完了となったのだが、問題は帰路に起きた。

加納鷲雄、かつての加納道之助と出くわしたからである。

「久しぶりですな、岸島さん」

五条の橋の真ん中で、道を塞ぐように立つ加納は巡査の姿をしている。

(新島どのが話していたのはこれか)

岸島は感づいた。

が。

さらに大垣屋が割って入った。

「これはこれは加納さま、お勤めご苦労様にございます」

大垣屋は会津屋敷や高台寺にも口入れの商いで出入りをしていたことがある。

加納を知っていたらしい。

「なぜわしを知っておる」

「加納さまが新撰組きっての猛者であられたことは、洛中でみな知っております」

大垣屋はやんわりと言った。

「加納さまと原田さまは、特に洛中で顔が知られておりましてな」

京わらべの噂話になっております、と大垣屋は洛中の顔役そのままの言い方をした。