おまさの実家が仏光寺通の菅原屋という店であることを知っていたので、

「ごめん」

と暖簾をくぐった。

「これはこれは、岸島さま」

「おまさどのとおしげどのに渡さねばならぬ物を預かっておって、それでここならなば何か分かろうかと」

そういえば岸島は原田左之助の屋敷には行ったことがない。

「実は手前どもも探しておりまして…山本先生なら、何かご存じなのではないかと訊いてはおるのですが」

と番頭は答えた。