そうしたある一日。 いつものように岸島が山本を背負って出仕すると、 「山本先生」 と近づいてきた男がある。 「知事だ」 岸島は慌てて山本を下ろそうとした。 「いやそのままそのまま」 知事の槙村正直である。 「槙村知事、いかがなされましたか」 「いや実はこの前先生に話した博覧会の件だが、どうにも頭の固い商人どもばかりで話にならんのだ」 渋い顔をした。