「お前ほんっとにバカじゃねぇの!!」


どうやら瀬川は心配すると怒る癖があるらしい。
目の前で腕を組んだ瀬川の眉間には深い深いシワが刻まれている。


「…ゴメンナサイ。
私そこまで活躍しないし、大丈夫かな、って」


「へぇ、38度熱があって、大丈夫かな?
バカだ。正真正銘のバカ」


「…ちょっと、いくらなんでも言い過ぎ」


「うるさい、黙れ。
とりあえず放課後迎えに来るから寝とけ」


そう言い残して、ついでに乱暴に頭を撫でて、瀬川は授業に戻って行った。


「あら〜、瀬川くんよっぽど心配なのね、あなたのこと」


保健室の小波先生が声をかけて来る。


「ちょっと狙ってたのに、あなたが居るみたいだから諦めるわ」


(って狙ってたのかよ。相手生徒!)


「そんなんじゃありません」


「…あら、そうなの。今は、ね」


「これからも、です」


頑なにそう言うと、先生はクスリと笑ってカーテンを閉めた。


「素直になった方がいいわよ」


そう言う先生の表情は、窺い知れなかった。