「写真撮影?」
瀬川が転校してきてからは1ヶ月。
瀬川が豹変してから3週間が経った放課後。
私と瀬川は、智花に呼び出されていた。
何事かと構えていると、智花は「写真を撮らせて欲しい」と笑顔で言い放ったのだ。
「そう、桜道祭のパンフレット用でね!」
桜道祭で生徒全員に配られるパンフレットには、各クラス、写真だったりイラストだったり詩だったりと自由なコラムを載せる。
「うちのクラスは写真なんだ?」
「うん、折角主役の見てくれがいいしね」
パンフレット係である智花の言葉に、私は苦笑いを浮かべた。その「見てくれのいい」イケメンの隣に立つこちらの身にもなって欲しい。
「いいよ」
二つ返事で返したのは、私の隣で話を聞いて居た瀬川だった。
「ほんとー!?よかった!
撮影は明日の放課後ね!衣装もメイクも本番通りにするから、よろしくね〜!」
そう言うと、智花はどこかへ行ってしまった。
「えっ、ちょっと、待って…!」
私、まだオーケーしてないんだけど…?
「楽しみだね、明日」
「いや、全然?」
「俺は楽しみだよ。
遥の衣装、見れるんでしょ?」
変態め、と瀬川の言葉を無視して踵を返す。
「え〜、無視はひどくない?」
ねぇねぇ、としつこくちょっかいをかけてくる瀬川を相変わらず無視しながら、ずんずん進んでいく。
「きゃ……っ!」
手首が掴まれ、急に後ろからお腹に手が回った。
「ねぇ、俺のこと無視してもいいの?
家でたっぷり、「お仕置き」されたいの?」
耳元でそう囁く瀬川をパッと振り返れば、ちゅ、と頬にキスが落とされる。
顔がどうしようもなく熱くなって、瀬川から逃げるように走り出した。廊下には人影がなく、遠慮せずに猛ダッシュする。
幸いにも瀬川の不意をつけたのか、絡まっていた腕はすぐに解けた。
何してんだ、私。
昨日の「お仕置き」から、どうも瀬川を意識してしまう。
目が合うと、体が触れると、強引で、でも優しい彼のキスを思い出してしまうのだ。
ダメ、ダメよ。意識しちゃダメ。
そう、キスされたから、何?
今まで通りけろっとして接すればいい。
なんて。そんなの無理だ。
だって今までのキスとは全然違った。
「好きだ」と、体で伝えてくるようだった。
忘れられない。あの、熱のこもった目が。
「遥、どしたのその顔!?」
教室へ駆け込むと、待ってくれていた奈々が驚いたように目を見開く。
「え、どしたのって?」
「顔真っ赤だし目は潤んでるし。
あんた今無駄に男子のこと誘惑してるわよ?」
「ゆ、誘惑って…!」
すると、目の前が真っ暗になった。
「えっ、何!?」
目を何かで押さえられている、というのは感触で分かるが、いきなりのことに私は混乱した。
「男のこと誘惑してんの?
それは聞き捨てならんな」
その声は間違いなく瀬川のもので、目を押さえているものが瀬川の手だと分かる。
ダメだ、また頬が熱い。
「してないっ!ってか離せ!」
先ほどとは打って変わってお腹に回った手には力が込められていて、暴れてもなかなか解けない。
放課後の教室には、まだまだたくさんのクラスメイトが居る。のにこの状況はまずい。
これは、仲良いね、というからかいじゃ済まないレベルだ。なんとかして瀬川から離れないと。
「……ぐふっ」
思いっきり後ろに向けた肘は、見事に瀬川の鳩尾に入ったようだ。よろめきながら瀬川が離れていく。
「…遥、やったな…?」
よっしゃ、と静かにガッツポーズを決める。
けれども、家に帰った後、「お仕置き」を受けたのは言うまでもない。(っていうか詳しいことは聞かないで)

