再会なんて望んでませんが





形勢逆転の一手。
瀬川に諦めてもらうにはどうするべきか。


「そうか、拓海ともっと仲良くすればいいんだ!」


この時は、我ながら名案だと思ったのである。


他の異性といい感じだと分かれば、きっと瀬川の行動もマシになる。そう思ったのだ。


拓海とは今更ボディタッチが少し増えたくらいで騒ぐ仲でもないし、丁度いい、と。


でも、もしタイムマシンがあるのなら。


そんな短絡的な考え方はやめろ!と首を絞めてでも止めたい。


「拓海、ちょっと聞いてよ今日の朝さー」


そう言いながら、拓海の肩に腕を回す。


「重い」


拓海は文句を垂れたが、私の腕を振り払う気配はない。


「レディに向かって失礼な」


「へーへー申し訳ありませんでした。
で、今日の朝何があったって?」


「電車の中でメイド服着てるおっさんが隣に立ってたんだけど、それはいいのよ別に。
でも!スネ毛ボーボーで!メイド服着るんだったら剃れよ!って思わない!?」


「いやそこ!?
俺としてはお前の着眼点のおかしさに突っ込みたいんだけど!?」


えー、なんでー、と反論するしながら、ふと前を見ると、瀬川が教室に入ってくる所だった。


ちらりとこちらを一瞥すると、瀬川の表情が一気に険しくなる。


「ひっ……」


こわっ、何あれ怖っ!


「た、拓海…見た?」


瀬川の表情は鬼そのもので、拓海からさっと腕を離す。


「見た…、鬼かと思った…」


もう一度ちらりと瀬川を見れば、鬼のような表情は消えていた。


「何だったんだあれは…」


「やめろよ話しかけんなよ怖いだろ…」


余りにもビビっている拓海が面白かった。
ただそれだけ。


ちょっとイタズラ。
その程度で、拓海に思いっきり抱きつく。


「ちょっ…おまっ、ほんとやめろ!
重いって…っ!」


「拓海バカだけど好きだよ!」


愛の告白もつける。出血大サービスだ。


「いや俺もお前のことは好きだけど友達として。ってかまじで離れろって!
…ひっ」


拓海がごくりと唾を飲み、固まる。


肩にすごい力を感じて、体が一気に後ろに引っ張られた。


「うわっ!」


「遥…、覚悟しとけよ?」


耳元で囁かれたそのセリフに、私は顔を青くすることしかできない。


「ち、違うんだよ瀬川…っ!
俺は、俺はこいつのこと何とも思ってないから!こいつも俺のこと何とも思ってないし!な?」



「分かってるって。
ごめんね、遥が迷惑かけて」


「お、おう…」


なんであんたが謝るのよ、という私のツッコミは、当たり前のようにスルーされた。


その後私は極秘に、拓海に無理やり「瀬川の前では距離間に気をつけよう協定」を結ばされた。