「もう…っ、離してよ!」
家での瀬川は、学校での比じゃないほどめんどくさくなる。
「いい加減慣れてよ。
まぁ顔と耳真っ赤にしてんのも可愛いからいいけどさ」
「だから誰のせいだと…っ」
学校から帰ると、制服を着替える間も無く瀬川の腕に閉じ込められる。
頭を撫で、髪に口づけし、肩に顔を埋め。
瀬川の気が済むまで、このスキンシップは続くのだ。
「もうやぁ…!離して!」
「バカだねぇ遥。その口調もその声も、俺を誘っているようにしか聞こえないよ?」
最短でも30分、30分!
瀬川は私を解放してくれない。
何度も逃げようと試みたけれど、同じ家では結局捕まってしまう。
「ちがっ…、ちょっとやめ…!」
「可愛すぎる…」
頬、おでこ、首筋、鎖骨、耳。
あらゆるところにキスが降ってきて、思わず熱い息が漏れる。
「やめてってば…!」
瀬川は私を横抱きするようにしてソファに腰掛ける。マズイ、今日は長引きそうだ。
「もうやだってばぁ…!…っ!」
「離してほしいみたいだけど、抵抗するのはやめときな?どんどん長引くだけだよ」
まぁ、抵抗しなかったらもっとするけど。と瀬川は当たり前のように呟く。
あの日から1週間。行為はどんどんエスカレートしてきている。
私の鍵も次々に壊れていく。
大体慣れろとか無理な話なのだ。
私の恋愛偏差値の低さはちょっとやそっとではどうにもならない。

