その日から。正確に言うと拓海とファミレスにいったその日から。瀬川の態度は急変した。


「遥!膝怪我してるよ、どうしたの!?」


「ああいや…、ちょっと転んで…」


「いつ!?俺が一緒に居たら助けたのに!
とりあえず手当しよう」


そう言うと瀬川は何処からか消毒液と絆創膏を取り出した。


なんで持ってるのそんなの!


「やっ!染みるイタイ!」


クラス中からの視線に気付いた私は、瀬川と距離を置こうと抵抗する。


確かに男が跪いて女の足を触っている光景は、端から見たら恋人同士のように見えるだろう。


…ムリムリそんなの!勘弁してよ!


「我慢して」


「いいよもう!
そんな大した怪我じゃないから!」


「雑菌入ったらどうするの」


「もう〜〜っ!」


瀬川は場所を問わず、私に絡みまくってくるようになった。


毎日毎日、ベタベタベタベタ!
正直たまったものではない。


いきなり仲良くなったものだから周りから怪しまれ、小学校が同じだったこともバレてしまった。(本当にめんどくさいことになった)


「ほんと遥は危なっかしいんだから。
これからは俺とずっと一緒に行動して」


「いやムリ。普通にそんなのヤダ」


「遥、あんたよく転ぶんだから瀬川くんに守ってもらった方がいいわよ」


…奈々。あんたはただ瀬川とお近づきになりたいだけでしょ。


ギロリと奈々を睨むが奈々は気にも留めない。


「ほら、中谷もそう言ってるし、ずっと俺と一緒に居れて嬉しいでしょ?」


「ふざけんな気持ち悪いんだよストーカー」


「ひどっ!」


ベタベタと腕を絡ませてくる瀬川から思いっきり逃げる。私の瀬川に対する態度は最悪なので、今の所女子に呼び出される気配はない。


…というか、さっきからニヤニヤとした笑みでこちらを見てくる視線を感じる。


私達は、瀬川を「観賞用」と割り切る一派の妄想のタネとなっているらしい。


「だってさぁ〜、クラスで1番可愛いけど男みたいな女の子が超絶イケメンにすごい勢いで甘やかされてんのよ!?
これで妄想しない訳ないじゃん!」


というのが奈々の言い分だ。


「ヤメてよ!瀬川とは全くそういうことはない、し…。うん、ないから!」


(もう既に3回キスされてますなんて言えない。
ましてや同居してますなんて…、口が裂けても言えない…!)


「観賞派も増えてきてるのよ、最近。
妄想だけなら無害だしいいじゃない」


「あんたの頭の中で私と瀬川がイチャイチャしてるって考えただけで寒気が止まらないわ!」


「あんた達が現実でいちゃついてくれれば妄想もしないんだけどねぇ」


「大体!クラスで1番可愛いってなに!?
あんた私のことバカにしてんの?」


「まぁ、遥さん、アナタ自分の容姿に関して自覚ない訳? うっわぁタチ悪!」


「何よそれどういう意味よ!
自分の容姿がそこまで良くないことぐらい自覚済みですぅ!」


「…もういい」


奈々は、そっぽを向いて黙り込んでしまった。