だめだ、言葉も表情も甘い、甘すぎる。


胸焼けしそうだ。


恋愛偏差値に差がありすぎる。


瀬川の方が一枚も二枚も上手だ。どれだけ抵抗しても失敗してしまう。


これは、危ない。
今ので一気に30個くらい壊れたな。


私は、火照った顔を冷まそうと立ち上がった。


すると、隣に座り直した瀬川に手首を掴まれる。


「どこ行くの」


「私の部屋」


「ダメだよ、ここに居て」


「は?なんで?」


「ここに居て。居ないとまたチューするよ」


「……もうっ!」


またキスされるのは、勘弁だ。


しょうがなくまた腰を降ろす。


すると、瀬川の腕が腰に回ってぐっと引き寄せられた。


べったりとくっついた体勢に悲鳴をあげる。


無理無理、近すぎるって!!


「ち、近いよ…!」


「照れてんの?可愛いなぁもう」


「もうヤダぁ…」


「ねぇそれ狙ってる?それとも天然?
…天然、だよねぇ…」


「…変なこと言ってないで離れてよ」


「嫌だってば。遥いい匂いするし」


「お風呂上がりだから」


「同じシャンプーなのにね。
なんか、甘いんだよ」


それを感じてるのはこっちだって一緒だ。
同じシャンプーだし同じ柔軟剤なのに、瀬川からはいい香りがする。


「離さないよ、何を言っても」


瀬川がこちらを向いた。
蕩けるような甘い視線に、クラクラする。


ほら、また何個か壊れた。