「ふざけないで!」
「ふざけてなんかないよ、大真面目」
ファーストキス、だった。大切な大切な。
こんな奴のために、とっておいた訳じゃない。
溢れそうになる涙をぐっとこらえ、未だ離れない瀬川を睨みつける。
「ふざけてるでしょ!
〜〜っ、もう離せ!」
「…勘弁してよ」
「何がよ!勘弁して欲しいのはこっちよ!」
「ごめん、泣かれたらつらい。俺が」
「…は?」
「無理矢理キスしてごめん。
抑えられなかった」
瀬川は、何とも言えない表情をしていた。
笑いながら泣いているようだった。
漆黒の瞳が、私をまっすぐ見つめていた。
「遥。俺のこと、嫌いだろ?」
「嫌いじゃない、大っ嫌いなの」
「そっか。そうだよな」
瀬川はそれ以上何も言わず、おずおずと私に絡めていた腕を緩めた。
また、目が合う。
「でも、いつか俺のこと、絶対に好きにさせてみせるから、覚悟してて」
瀬川はそう言って、ニヤリと笑った。
私はその笑顔に見入ってしまって、何も言い返せなかった。

