妹の恋人[完]

「・・・自分でもわかっているんだ、お前が悪くないって」

足元を見つめたままの高橋ワタル。顔を上げたと思うと、窓の外を見てため息をついた。

「サトミと仲がいいんだろう？」

窓から振り返り、俺の眼を見てサトミという高橋ワタル。その眼はついさっきまでの不機嫌なものではなくて、なんだか悲しそうな眼をしていた。

「サトミって、高橋さん？」

俺の知っている女性で、サトミという名前は高橋さんしか思い出せない。

なんでここで高橋さんの名前が出てくるんだろう？

そういえば同じ苗字だな・・・と高橋ワタルの話を聞きながら、漠然と考えていたら、自分の頭をくしゃくしゃっと書きながら彼はつらそうな笑顔を見せた。

「俺とサトミは従姉弟なんだよ」

父親同士が兄弟なんだ、そういう高橋ワタルは変わらず悲しそうな顔をしていて。

従姉弟だとどうして悲しいんだろうか。

相変わらず答えの出ない俺は、疑問をそのまま高橋ワタルにぶつけてみる。

「俺の、初恋」

ははっと乾いた笑いをして、再び窓の外に視線をそらした高橋ワタル。

「初恋・・・」