妹の恋人[完]

ぼーっとしている俺の横に立った高橋ワタルが、先輩二人に挨拶をする。

あわてて俺も「おはようございます!」とあいさつしたものの、隣の存在を思い出してもんもんとしてしまった。

結局どうして俺のことが嫌いなのだろう。

その日の朝連は、珍しく他の1年が全員遅刻というあり得ないことをしたおかげで、なぜか早く来ていた俺と高橋ワタルも連帯責任とかで朝から校庭を走らされて終わってしまった。

授業が始まってからもやはり気になって仕方がなくて。

こうなったら休み時間に高橋ワタル本人に聞きに行くしかない、と2時間目が終わったと同時に教室を飛び出した。

D組の前までくると、授業が終わって開け放たれた扉から近くにいた人に声をかけ、高橋ワタルを呼び出してもらう。

「浅野コウヘイ」

位置近くの廊下で待っていると、フルネームで呼ばれて振り返った。

「朝練の続きの話をしたいんだけど」

明らかに不機嫌そうな高橋ワタル。いつもそんなに不機嫌なんだろうか?

入口の前で話をしていても目立つだけなので少し歩いて空き教室の前まで移動する。

改めて高橋ワタルを見ても、相変わらず不機嫌そうで腕を組んで窓にもたれながら足元を見つめていた。

「どうして俺のことを嫌っているの?」

いくら考えてもわからない。初対面で嫌そうな態度を取られ、二人きりになったら嫌いだと言われた。