妹の恋人[完]

「おにいちゃん、私高校生になったら、彼氏が欲しいな」

冬の海は風がとても冷たくて。

海岸を二人で歩いたけど、あまりの冷たさに自販機で温かい飲み物を買ってすぐに車に戻った。

「彼氏?」

「うん。前につきあった人はあんなだったし」

ホットココアを飲みながら、窓から見える海の荒波を見つめていて。

「あんなの、付き合ってないよ。彼氏じゃない」

寂しそうな横顔に、思わず手が伸びて頭を撫でてしまう。

二股かけられていたカナコ。

実際は付き合っていたと言うよりは、友達の延長でしかなかったようだった。

手をつなぐくらいはあったようだけど、それ以上のスキンシップも無かったようだし。

「もっと、心から大切に思える人に出会えるよ」

「そうかなー」

これから始まる新しい生活に、不安よりも期待が大きいのがよくわかる。

カナコは何にでも前向きで、明るいのが良いところだと思う。

ハナちゃん曰く、それなりに人気もあるようだけど、本人が女らしくないというか何というか。

まだまだ幼くて、気がつかない面も多そうだ。

1時間ほど話し込んでから、近くにあるショッピングモールでお昼ご飯を食べてから買い物をし、夕方に帰宅した。

「おにいちゃんみたいな彼氏が欲しいな」

自宅につくなり、母さんにそんなことを言って。

「あらー、ハードルが高いんじゃない?コウヘイモテるらしいわよ?」

夕飯の支度をしながら母さんが笑っていて。

リビングでテレビを見ていた父さんだけが、真剣な顔をしていた。

「父さん?」

そんなに真剣に見るような番組でも無いのに。

不思議に思った俺が声をかけると、小さくため息をついた。

「今夜、転勤の事をカナコに話そうかと思ってる」