妹の恋人[完]

「やったぁ!」

春に始めたバイトだったけど、なかなか機会がなくて俺が働いている時間に食べに来るのは初めて。

両手をあげて大喜びをしているカナコをみると、それだけでなんだか嬉しくなってしまう。

「ふふ。さあ、早く準備しないと遅刻するわよ」

食後に飲む俺のコーヒーをいれてくれながら、カナコの食べ終わった食器を片づけている母さんも、今日はなんだかうれしそう。

あわてて牛乳を飲み干し、ばたばたと準備をしているカナコをみて、俺もコーヒーを飲む。

「しばらく仕事がゆっくりになりそうでな。早く帰ることができるようになったんだよ」

今までずっと頑張ってきた父さん。

これから家族で過ごせる時間も増えるんだろうか。

家になかなかいる時間の少ない父さんの代わりに、俺たちのことを何でもすべて一人でこなしてきた母さんも、少しはゆっくりできるんだろうか。

俺ももう少し自立して自分の身の回りのことくらいできるようにならないと。

「そう言えば今朝はカナコも一緒だったのね?」

「え、母さん知らなかったの?」

父さんの読み終わった新聞を受け取り、ざっと経済面などを読んでいると、コーヒーを飲みながら一息ついている母さんに聞かれて。