すれ違いざまに、ふわっと懐かしい香りに包まれた。

苦しいほどに胸が締め付けられ、じわりと涙が目に溜まる。
嬉しいような、切ないような、とてももどかしい気持ちになって、私はゆっくり振り返った。

けれどそこには、知らない男の子が数人並んで歩いているだけだった。
制服からして中学生らしかった。


私は、楽しそうにゲラゲラと笑う彼らを力無く見つめ、ぼんやりと羨ましく思った。

さっきまでのもどかしい気持ちは、切なさの方が大きくなって胸が押し潰されそうだ。


『まぎらわしいなぁ…もう…』


私はその切なさに負けないようにと、小さく小さくつぶやいた。



溢れてくる涙を必死で我慢しながら、自分の諦めの悪さを痛感する。
悔しさと悲しさが一気に襲ってくる。





同じ香水の人なんてたくさんいるのに。

あの人はもう、この町にはいないのに…