通学電車、帰り道。

信号は赤。
手をつないで、人一人分空いていたスペースはぴたりと近づき、織田君の声が斜め上から降ってくる。


「高瀬さんは家、A市なんだっけ」

「うん。そうなの、ちょっと遠いんだよね」

隣の市にある私の家。
電車では、織田君の駅を通過してゆくのだ。

手をつないだ恥ずかしさを打ち消す様に、雑談が始まった。
手をつないでいるのに、つきあってないなんて変な気もするけど、今は心がくすぐったくて、嬉しくて、浮かれてしまいそうになるのを堪えていた。


改札の前で、手が解けた。

織田君の背中を見ながら改札を通る。
手は……もう終わりかなぁ。

言ってみたら、つないでくれるのかな。

でも、ドキドキして言えない。

会話はまた消えてしまって、二人でホームに並んだ。