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あの日から少女が帰る頃になるとたまに敬太が少女の家の前にいる時があった。

少女はそのまま敬太の部屋まで着いていく。

何も言わずそのまま...


ある日、脱がしたシャツを着直してる少女をボーっと見ていた。

大きな傷が痛々しいほどハッキリと残ってる。


前に少女には好きな人がいると言っていた。

敬太はいつもそれが誰なのか気になっていた。

考えれば考えるほどむしゃくしゃして居たのだが、その傷を見ながら思った。

「お前さ、傷があるから彼氏作らないの?」

...気付いたら考えてた事が声に出ていた。

ハッとした時には遅かった。

少女は目を見開いたまま止まっていた。

そのままゆっくりを顔を上げ敬太を見る。

するとポタポタと涙が落ち始めた。

いつもなら何を言っても笑ってるのに、その時初めて涙を流してるのをみた。

「おっ...おい!」

敬太は少女の肩を揺すってみたが、少女は固まったまま真顔で涙を流している。

「...私が好きなのは、けいちゃんだよ。」

少女の目からポロポロと涙が落ち続けた。

敬太はハッとした。

傷付けたくて言ったんじゃない、ただ幸せになって欲しかっただけだった。

いや違う、逃げてたんだ。

「...ははっ!ごめんねいきなり泣いちゃって。馬鹿だね私っ!」

少女はそう言っていつものようにニヘッと笑った。

「頭冷やしてくるね...っ!」

そう言って彼女はカバンも持たず外に出ていった。