「けいちゃん、ごめん!お待たせ!」

そう言って出てきた少女はひまわり柄の浴衣を着ていた。

長い髪も綺麗に束ねて、ほんの少しだけ、化粧をしていた。

とてもとても可愛かった。


「...バイク乗れねえな。」

そう言って敬太はお祭り会場の方へ歩き始めた。

少女の事はそれ以上見れなかった。

「ご、ごめん!」

カランカランカラッカラッカラン...
慣れない下駄で一生懸命着いてくるのが分かった。

花火まで時間があるというのに既に祭りの会場は賑わっていた。
少し日が落ち初め屋台のライトが点き始める。

「あ、射的」

敬太はそういうと200円を渡し構えた。

中身は分からない変わった射的だった。

パンッ...パンッ...ポトッ...

「おー兄ちゃん上手いねえ、ほい」

そう言って渡された紙袋の中身は思ったより小さい感じがした。

「けいちゃん凄い!!」

少女はいつにもなくはしゃいだ。

紙袋を開けてみると、5cm四方のケース。

オモチャの指輪が入っていた。

リングの大きさを変えられる、いかにも小学生が好きそうなものだった。

敬太は思いっきり不機嫌な顔をした。

「これ、やる」

そう言って少女に渡したがどうせ捨てろとでも言うと思った。

「え!?ほんと!?良いの!?!?やったー!!!」

少女は今までに見た事ないくらいはしゃぎ、右手薬指につけた。

「あっれー?敬太じゃん。」

「あ、鈴音さ...っつ!」

鈴音は敬太の肩に肘を乗せた。

「なにー?デートでもしてんのー?」

鈴音は敬太の耳元で話す。

「うるせー、悪いかよ!」

そう言うと敬太の顔は一気に赤くなった。


少女には敬太とその、綺麗な大人の女の人の会話が聞こえない。

ただ、ただ、見てるだけしか出来なかった。

敬太の顔が赤くなったのをみて、見たことのない表情だと思った。




そしてその表情の意味を...






「...おい。」

「...あ、ごめん」

鈴音が居なくなりまた2人で歩き出した。

「...さっきの人って...」

「会社の先輩の...奥さんだよ」

「そっか...けいちゃん、あの人の事好きなんでしょ!」

「は?馬鹿ちげーって。」

「うっそだー!」

少女はそう言うといつものようにニヘッと笑った。

いつもの笑顔が浴衣のせいもあって余計に可愛く見えた。

思わず敬太は顔を背けた。

耳まで熱くなってるのが分かった。

「...やめろよ、そういうの」

思ったより声が低くなってしまった。

「...もし、私が今日花火じゃなく行きたいって言わないで、海に行ってたら...知らずに済んだのかな...」

少女は少し俯いて話した。

「...え?今なんっ...」
ドーーーン!!!!

大きな音と共に空に大きな花が咲き散りゆく

夏が終わる