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「けいちゃん!」

「...ん」

敬太は空いた時間があると相変わらず少女の家の前で少女の帰りを待っていた。
現場仕事のせいか体格もがっしりし肌も黒く焼けていた。

少女は高校生になりおさげをやめた。
敬太を見つけると綺麗なロングストレートの髪を風になびかせながら、変わらない笑顔で少し小走りで駆け寄る。

そして2人で敬太の部屋に向かう。

夕方なのに太陽が暑い。


「お前さ、夏休みなのに出かけねえの?」

敬太は部屋のパソコンをいじりながら話す。

「あきちゃんと桜に海誘われたんだけどねえ。」

制服のブラウスを着直しながら答える。

「ふーん...誰それ」

「え!?覚えてないの!?同じクラスだったのに!」

「覚えてない。...んで、行かないの?」

「...行けるわけないじゃんっ!...私バカだから夏期講習あるし!水着も中学の頃のスク水しかないし!」

「...ふーん」

少女がそう言いながら傷を触ったのを敬太は見逃さなかった。

「そういやバイクの免許とってから1年経ったんだわ。」

「え?そうなんだ!おめでとうっ!」

「連れてってやるよ。今度の休みに。」

「...え?」

「なんだよ。」

「あっ...いや、えっと...そ、それよりも…」

そう言うと、一呼吸置いてから

「...あの...今度のお祭り一緒に行ってくれないかな?」