*****

「けいちゃん!」

ニヘッと笑い締りのない顔をして駆け足で近づいてくるおさげの少女。

「んだようるせーな。」

「けいちゃん、あのね。」

「ったく!なんだよ!」

「けいちゃん、今日さありがとう。」

「うるせーな!」

横断歩道が青になった。

敬太の友達は一斉に走って渡る。

「やっぱり私…けいちゃんのお嫁さんになりたい!」

「っ!...はいはい!」

一気に顔が赤くなるのが分かった。

「おい!おせーよけーた!!」

「うるせーぞばーか!ゆっくり歩いてやらあ!」

こんな顔友達には見せられない。
平然と装うのが精一杯だった。



その時だった

「けいちゃんっ!!!」

ドンッと強く背中を押され、滑るように転び、前方の電柱に背中からぶつかった。

「っ!てぇ……なんだよ……っ!?」

右膝からふくらはぎにかけてジンジンとする痛みがあった。
背中はランドセルのお陰で痛くなかった。

周りを見渡す

車道の真ん中に赤いランドセルが転がっていた。

おかしい、あいつのランドセルはピンクなのに。

周辺が全て赤く染まってる

ランドセルの下に見慣れた髪飾りとおさげ

「おい!!!!!」

敬太は叫びながら痛む体を起こそうとする。

「け…いちゃん……」

少女は少し顔をあげた。

「何言ってんだ!!馬鹿!!」

近づこうにも足が動かない。

「けいちゃ…ごめん…ね」

そう言って二へッと笑い目を閉じた。

「おい!!!」

少女に向かって手を伸ばすが届かない。

「馬鹿!!!何やってんだよ!!!」

大人達によって敬太は道の脇に担がれた。

「馬鹿!!!やめろ!!!おい!!!」

少女は動かない。

少女の周りに人が集まり敬太から見えなくなった。

「っくしょー!!!!!!」

サイレンが近づく。












「なんで庇ったんだよ!」

あれから数日が経過した。
敬太は歩けるようになり、真っ先に少女の病室に行った。

「だって、けいちゃん危なかったから……」

少女は色々な管が繋がれ、あちこちに包帯が巻かれていた。

「お前死ぬ所だったんだぞ!?何してんだよ!!」

「大丈夫だよ、私死なないよ」

そう言っていつものようにニヘッと笑って見せた。

「けいちゃん、強く押してごめんね、足痛くない?」

少女は敬太の松葉杖と右足の包帯を見て言った。

「お前の方が痛いだろ!何言ってんだよ!自分の心配しろよ馬鹿!!」

「けいちゃん、ごめんね。」

そう言ってまたニヘッと笑った。