昔話だけど実はそんなに昔でもない話。
あなたは私を君と呼ぶ。
それは多分あなたの癖であって他の人を呼ぶ時もそう。
一人称が僕であるあなたの可愛らしい癖。



大人数の中に居る私に声をかける時だけは姓で呼ぶ。

その姓は結婚してからの姓であり、結婚してからといっても早10年。私の人生の3分の1はこの姓だから馴れたものだ。

出会った時の私達の関係はどこにでもある、ありふれた関係。
そう、ただの同僚。正確には上司と部下。

私は既婚者であなたにはパートナーと呼べる人が居た。

私はずっとこの業界で仕事をしていて、あなたは転職してこの業界に入ってきた。
経験は私の方が長く、会社の在籍年数はあなたが長い。


だから上司であっても偉ぶらずストレートに質問をするあなたに最初から好印象を抱いていたのかもしれない。

でも今更過去を思い返してみても仕方がないし、実際の気持ちなんて分からない。

‘だからしないのよ,と私が言うと
‘相変わらず0か100の人だね,とあなたは笑うの。

でもね、本当に過去の話をしても仕方がないの。過去の全てが私を作り、あなたをつくり。
もしも…やこうだったら…何て言いだしたらキリがないから。

そうやって過去に縛られたくないの。
過去も含めての私を愛して欲しいから。
未来永劫あなたを愛したいから。